胆道・膵管の上皮内腫瘍 (2019年WHO消化器腫瘍分類改訂をうけて)
2020年11月05日 06:55
統合プログラム2(ワークショップ)
本日 14:30〜17:00 第6会場
司会 | 大塚 将之氏 千葉大大学院・臓器制御外科学 |
入澤 篤志氏 獨協医大・消化器内科 | |
演 者 | 中沼 安二氏 福井県済生会病院・病理診断科/静岡がんセンター・病理診断科 |
福嶋 敬宜氏 自治医大・病理診断部 | |
長尾 宗政氏 京都大大学院・消化器内科学 | |
藤澤 美亜氏 東海大・消化器内科 | |
植村 修一郎氏 東京女子医大・消化器・一般外科 | |
清水 晃典氏 尾道総合病院・消化器内科 | |
田畑 宏樹氏 がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科 |
消化器がんは粘膜の上皮から発生するとされ、上皮内腫瘍は先行病変あるいは発生初期段階と考えられる。日本の消化器内科・外科医と臨床病理医の共同研究は古くから盛んで、胃がんにおける上皮内がんの概念創出という業績は広く知られている。
膵においては、1982年に粘液産生膵腫瘍の概念が提唱され、膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)という疾患概念が定着した。これに端を発した膵菅上皮内腫瘍の研究は病理形態学を基盤とし、膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)および膵管内管状乳頭腫瘍(ITPN)が膵がんの先行病変、前がん病変として分類された。その後、ゲノム医療の進展などにより、2019年の世界保健機関(WHO)消化器腫瘍分類改訂では、intraductal oncocytic papillary neoplasm(IOPN)が独立した膵の上皮内腫瘍として定義された。
胆道については、ほとんどが進行がんとして見つかるため上皮内腫瘍の検討は進んでいなかった。しかし、膵と同様の粘液産生胆管腫瘍の報告や、基調講演演者の中沼安二氏らによる肝内結石症における胆管内に発育する乳頭状腫瘍の報告から、膵のIPMNに対するカウンターパートとして胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)という概念が提唱された。また、胆囊における同様の腫瘍であるintracystic papillary neoplasm(ICPN)や、PanINに相応する胆道上皮層内腫瘍(BilIN)が定義された。ただし、これらは膵を意識して概念的な枠組みが先行したものであり、現在、臨床病理学的研究や分子生物学的解析などによる裏付け研究が盛んに行われている。
上皮内腫瘍の検討は発がんや浸潤がんに至るメカニズムを理解する端緒となり、予後不良な膵・胆道がんの予防、早期診断・治療につながる可能性がある。ただし、膵・胆道の上皮内腫瘍は臨床的意義、分子生物学的な相違など不明点も多い。本セッションでは、これらの最新の研究結果が報告される予定である。
分類改訂の概説および基礎的・臨床的検討の結果を報告
セッションの冒頭には2人の病理医による基調講演が行われる。中沼氏は胆道上皮内腫瘍、特にIPNBについて、福嶋敬宜氏は膵管上皮内腫瘍について、いずれも2019年のWHO消化器腫瘍分類改訂を中心に解説する。その後、3人の演者から胆道上皮内腫瘍の基礎的・臨床的検討について、後半の2演題では膵管上皮内腫瘍に関して報告される。
長尾宗政氏は幽門腺型胆嚢腺腫と幽門腺形質を持つBilINの形成にKrasおよびWntシグナルが果たす役割について、マウスを用いた検討結果を報告する。藤澤美亜氏はICPNの臨床検体を用いた分子病理学的検討による知見を報告し、植村修一郎氏はIPNB切除例の検討から予後因子の解析結果を提示する。清水晃典氏はstage 0膵がんをPanIN-3とIPMN with high-grade dysplasiaに分け臨床的特徴を検討。田畑宏樹氏からは分枝膵管の拡張を伴うPanIN-3の診断で有用性が期待される限局性膵萎縮について示される予定だ。
腫瘍分類改訂の概説とともに、膵管・胆道上皮内腫瘍の本質について、基礎的検討のみならず、臨床的意義、behaviorについて幅広く取り上げられている。膵管・胆道上皮内腫瘍の実態、意義に迫ることが期待される。
インタビュー記事一覧
特別企画
新型コロナ感染症と消化器診療 11月6日(金)14:00~17:00 第10会場
新型コロナ感染症と消化器診療
[司会]
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持田 智氏(埼玉医大・消化器内科・肝臓内科)
[基調講演]
COVID-19の我が国における疫学状況と対応(脇田 隆字氏 国立感染症研究所)
[講演]
日本におけるCOVID-19の臨床(田村 格氏 自衛隊佐世保病院)
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日本人におけるCOVID-19重症化が少ない理由(金井 隆典氏 慶應義塾大・消化器内科)
[講演]
SARS Cov2 virus ワクチン開発の現況と将来(森下 竜一氏 大阪大大学院・臨床遺伝子治療学)
[日本消化器病学会]
COVID-19パンデミックにおける消化器専門医の役割(伊佐山 浩通氏 順天堂大・消化器内科)
[日本肝臓学会]
COVID-19への対応-日本肝臓学会の立場から-(四柳 宏氏 東京大医科学研究所・先端医療研究センター感染症分野)
[日本消化器内視鏡学会]
COVID-19拡大下における消化器内視鏡診療(入澤 篤志氏 獨協医大・消化器内科)
[日本消化器外科学会]
COVID-19と消化器外科診療(日比 泰造氏 熊本大・小児外科・移植外科)
[日本消化器がん検診学会]
消化器がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策について(加藤 勝章氏 宮城県対がん協会がん検診センター)
統合プログラム
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消化器疾患診療におけるパラダイムシフト:第4次産業革命と20年後の消化器病学
近年、消化器疾患の疾病構造は大きく変化し、技術革新と相まってパラダイムシフトが生じた。人工知能(AI)、IoTなどによる第4次産業革命が消化器疾患診療にもたらす影響を考察する。
[司会]
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下瀬川 徹氏(みやぎ県南中核病院)
11月5日(木)統合2(ワークショップ) 14:30~17:00 第6会場
胆道・膵管の上皮内腫瘍(2019年WHO消化器腫瘍分類改訂をうけて)
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[司会]
大塚 将之氏(千葉大大学院・臓器制御外科学)
入澤 篤志氏(獨協医大・消化器内科)
11月6日(金)統合3(パネルディスカッション) 9:00~12:00 第6会場
高齢者の消化器病診療の適応と妥当性
急速な高齢化の進展に伴い、特別な配慮が必要となる高齢者の消化器疾患も増加している。消化器病診療における青壮年者と高齢者の相違点を明らかにし、対策について議論する。
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11月6日(金)統合4(ワークショップ) 14:00~17:00 第6会場
ゲノムを用いた消化器疾患の治療戦略
昨今のゲノム研究の著しい進歩により、消化器疾患に対してもprecision medicineが期待されるようになった。ゲノム研究を用いた新しい治療戦略を議論する。
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吉田 和弘氏(岐阜大大学院・腫瘍外科学)
11月7日(土)統合5(パネルディスカッション) 9:00~12:00 第6会場
マイクロバイオータ(腸内細菌)と全身疾患
自己免疫疾患や発がんなどへの関与が指摘される腸内細菌叢について、肝胆膵をはじめとする消化器疾患、さらには全身性疾患との関係について考察する。
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安藤 朗氏(滋賀医大・消化器内科)
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11月7日(土)統合6(シンポジウム) 14:00~17:00 第6会場
胃・食道接合部領域の諸問題
最近注目を集めている胃・食道接合部(GEJ)領域の疾患について、定義、診断方法、Helicobacter pylori感染との関連、発がんリスクといったトピックについて議論する。
[司会]
瀬戸 泰之氏(東京大大学院・消化管外科学)
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Strategic International Session
11月6日(金)ST-S1(シンポジウム) 9:00~12:00 第9会場
JSGE・AGA Joint Symposium:疾患病態における腸内細菌の役割(JSGE・AGA Joint Symposium:Cause and effect of microbiota for health and diseases)
ヒトの腸内には約1,000種類、100兆個にも及ぶ細菌が生息しており、それらの集団が腸内細菌叢(マイクロバイオータ)を形成している。本セッションでは、腸内細菌叢が宿主細胞の機能に及ぼす影響や、炎症性腸疾患(IBD)をはじめ多様な疾患との関係について議論する。
[司会]
金井 隆典氏(慶應義塾大・消化器内科)
竹田 潔氏(大阪大大学院・免疫制御学)
Ramnik Xavier氏(Harvard University)
Eugene B. Chang氏(The University of Chicago)
[Discussant]
垣内 伸之氏(京都大・腫瘍生物学)
根本 泰宏氏(東京医歯大大学院・消化器病態学)
11月6日(金)ST-S2(シンポジウム) 14:00~17:00 第9会場
JSH・AASLD Joint Symposium:肝癌:サーベイランスと治療(JSH・AASLD Joint Symposium:Surveillance and treatment of hepatocellular carcinoma)
肝がんの危険因子として、ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール摂取が知られている。肝がんの死亡率を抑制するには早期の発見と局所療法施行が重要だが、早期に診断される症例の少なさが課題となっている。近年の分子標的治療の進歩も踏まえ、肝がんの効果的な治療戦略の再構築を議論する。
[司会]
竹原 徹郎氏(日本肝臓学会・理事長)
Ray Kim氏(Stanford University Medical Center)
11月7日(土)ST-S3(シンポジウム) 9:00~11:00 第9会場
大腸癌に対する新たな診断,治療戦略(New diagnostic and treatment approach for the colorectal cancer)
最近の集学的治療と診断法の向上により、大腸がんの治療戦略は劇的に変化している。直腸がんではさまざまな術前化学療法の新規レジメンを検証する臨床試験が進行している他、非手術的管理による臓器温存術(watch and wait)が注目されている。本セッションでは、大腸がんの診断と治療における革新的なアプローチに焦点を当てる。
[司会]
内藤 剛氏(北里大・下部消化管外科)
小西 毅氏(University of Texas MD Anderson Cancer Center)
11月7日(土)ST-PD1(パネルディスカッション) 14:00~17:00 第9会場
日米における内視鏡医療の相違-日本の消化器内視鏡学会に期待すること-(Bridging Japan and the US in the gastrointestinal endoscopy-The expectations for JGES-)
米国消化器内視鏡学会(ASGE)のRobert Hawes氏、世界内視鏡学会(WEO)会長のFabian Emura氏をお迎えし、日本消化器内視鏡学会への期待をご講演いただく。また、米国で活躍する日本人内視鏡医を交え、日米の相違や今後の消化器内視鏡医療の展望について議論し、若い世代の内視鏡医に向けてメッセージを発信する。
[司会]
田尻 久雄氏(東京慈恵会医大・先進内視鏡治療研究講座)
河合 隆氏(東京医大・消化器内視鏡学)
[コメンテーター]
勝呂 麻弥氏(東京医大・消化器内科)
Philip Wai Yan Chiu 氏(Department of Surgery, Faculty of Medicine, The Chinese University of Hong Kong)
JDDW 2020 女性医師・研究者プログラム 11月6日(金)14:00~17:00 第13会場
女性医師の選択?ジェネラリストかスペシャリストか -新専門医制度に向けて
[司会]
佐々木 裕氏(長崎国際大)
名越 澄子氏(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科)
[演者]
● GeneralityとSpecialtyとの有機的連携(佐々木 裕氏 長崎国際大)
● 憧れの消化器外科専門医・スペシャリストを目指して(高須 千絵氏 徳島大・消化器・移植外科)
● 新専門医制度での女性スペシャリスト育成の課題(岡田 英理子氏 東京医歯大・臨床医学教育開発学・総合教育研修センター)
● 消化器内科のジェネラリストを目指して(小林 奈津子氏 健和会病院・消化器内科)
● 食道内視鏡医を目指して(藤原 純子氏 防府消化器病センター・消化器内科)
● 女性医師キャリア形成における専門医取得の意義~開業医の立場より~(山田 裕希氏 林田クリニック)
第20回医療セミナー 11月7日(土)9:00~12:00 第13会場
働き方改革への取り組み
[司会]
小池 和彦氏(東京大大学院・消化器内科学)
森 正樹氏(九州大大学院・消化器・総合外科学)
[演者]
● 医師の働き方改革の制度設計(加藤 琢真氏 厚生労働省・医政局医事課)
● 大学病院における医師の働き方改革について(石丸 成人氏 文部科学省・高等教育局医学教育課)
● 地方の大学病院,消化器病診療科の立場から(日浅 陽一氏 愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
● 外科医の働き方改革に向けての取り組み(馬場 秀夫氏 熊本大大学院・消化器外科学)
● 消化器内視鏡学会の立場から ―女性内視鏡医キャリアサポートWGの活動を含めて―(中村 真一氏 東京女子医大・消化器内科)
● 肝臓学会の立場,および女性医師の立場から(飯島 尋子氏 兵庫医大・消化器内科)
● 公的病院・研究所運営および産業保健推進の立場から(大西 洋英氏 労働者健康安全機構)