クリニカルステージ Ⅰ食道癌に対する集学的治療
2021年11月04日 06:45
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統合プログラム2(パネルディスカッション)
本日 14:00〜17:00 第6会場
司会 | 竹内 裕也氏 浜松医大・2外科 |
石原 立氏 大阪国際がんセンター・消化管内科 | |
加藤 健氏 国立がん研究センター中央病院・頭頸部・食道内科 | |
演者 | 松田 諭氏 慶應義塾大・一般消化器外科 |
松枝 克典氏 大阪国際がんセンター・消化管内科 | |
阿部 清一郎氏 国立がん研究センター中央病院・内視鏡科 | |
馬場 祥史氏 熊本大大学院・消化器外科学 | |
門田 智裕氏 国立がん研究センター東病院・消化管内視鏡科 | |
八田 和久氏 東北大・消化器病態学、東北GI Endoscopy group | |
丸山 傑氏 がん研有明病院・消化器外科 | |
三浦 昭順氏 がん・感染症センター都立駒込病院・食道外科 |
クリニカルステージⅠ(cStageⅠ)食道がんに対する治療選択肢は、①手術(食道切除術)、②化学放射線療法(CRT)−に大別される(図)。従来の治療の主流は手術だったが、近年はCRTでも良好な成績が得られていることから、治療の選択肢をめぐり活発な議論が展開されている。司会の竹内裕也氏は「本セッションでは、cStageⅠ食道がんにおけるベストな治療戦略について考察を深めたい」と述べる。
それぞれの治療選択肢を多角的に検討
近年、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)0502※1試験において、cStageⅠ食道がんの全生存期間に関しCRTの手術に対する非劣性が示された。同試験の総括報告書によると、5年超では手術と比べCRTで生存率の低下が見られたものの、5年生存率には差がなかった。こうした知見から、CRTもcStageⅠ食道がんにおける標準治療の1つと考えられるようになりつつある。
さらにJCOG0508試験※2では、腫瘍原発巣が粘膜下層内に存在するcStageⅠ食道扁平上皮がんに対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)後における予防的CRTの有用性が示されるなど、内視鏡的切除〔EMRまたは内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)〕の施行後にCRTを追加することで、手術と同等の成績が得られる可能性も示唆されている。
このように、cStageⅠ食道がんの治療戦略をめぐっては、従来通り手術を先行するのか、それともCRTを行うのか、あるいはEMRやESDで原発巣を切除した後に組織学的評価に基づいて治療方針を決めるべきかなど、さまざまな提案が示されている。こうした近年の研究成果を踏まえ、本セッションは単施設における手術とCRTの比較、cMM/SM1食道がんにおける内視鏡的切除の位置付け、救済内視鏡切除術(sER)後の再発危険因子の検討、手術およびCRT後の長期予後など、8演題で構成。竹内氏は「多様な内容の発表があり、いずれも関心を持って聴講していただけるのではないか。また、外科医、内科医、内視鏡医それぞれの立場からの発表という点でも興味深い」と述べる。
手術に対するCRTの非劣性が示された中において、今後は手術適応の判断が議論の焦点となる。「患者因子(年齢、希望など)や腫瘍因子(腫瘍の病理結果など)を治療方針決定の判断材料とすることになるが、いずれも有用性がいまだ明確でなく、検討が必要」と竹内氏。「本セッションを通して、こうした課題についてもコンセンサスが得られるのではないか」と展望している。
※1 臨床病期I(clinical-T1N0M0)食道がんに対する食道切除術とCRT同時併用療法〔シスプラチン+フルオロウシル(5-FU)+放射線療法〕のランダム化比較試験
※2 粘膜下層浸潤臨床病期Ⅰ期(T1N0M0)食道がんに対するEMRとCRT併用治療の有効性に関する非ランダム化検証的試験