SVR後の肝癌サーベーランス法の検証
2021年11月04日 06:45
ワークショップ5 提案:日本肝臓学会
本日 14:00〜16:30 第5会場
司会 | 榎本 信幸氏 山梨大・消化器内科 |
建石 良介氏 東京大大学院・消化器内科学 | |
演者 | 瀬崎 ひとみ氏 虎の門病院・肝臓センター |
熊田 卓氏 岐阜協立大・看護学部 | |
安井 豊氏 武蔵野赤十字病院・消化器科 | |
井出 達也氏 久留米大医療センター・消化器内科 | |
田畑 優貴氏 大阪大大学院・消化器内科学 | |
渡辺 崇夫氏 愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学 | |
竹内 康人氏 岡山大・消化器内科 | |
三木 大樹氏 広島大大学院・消化器・代謝内科学、広島大・肝臓・消化器研究拠点 | |
本間 雄一氏 産業医大・3内科 | |
中塚 拓馬氏 東京大附属病院・消化器内科 | |
小川 栄一氏 九州大関連肝疾患研究会 | |
的野 智光氏 姫路聖マリア病院・消化器肝臓内科、兵庫医大病院・肝・胆・膵科 | |
田中 知子氏 福井大・2内科 | |
播本 憲史氏 群馬大・肝胆膵外科 | |
谷 丈二氏 香川大・消化器・神経内科 |
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場により、ほとんどの慢性C型肝炎患者で持続的ウイルス陰性化(SVR)達成が可能となった。一方、SVR後も肝がんを発症する患者は一定数存在するため、定期的にサーベイランスを行うことが重要となる。司会の榎本信幸氏は本セッションの狙いについて、①肝がんサーベイランスを実施すべきSVR後の対象・頻度・方法の解明、②医療資源の適切な配分、③将来的に発がん率を下げるヒントの探求―の3点を挙げる。
サーベイランスが不要な対象を考察
SVR後における肝がん発症の危険因子として、α-フェトプロテイン(AFP)などの腫瘍マーカー高値、肝臓の高度線維化、糖尿病や脂肪肝の合併などが挙げられる。しかし、これらが認められないケースでサーベイランスの間隔を空けてしまうと、万が一肝がんを発症した際に発見が遅れ、治療が困難となりかねない。
ただし、超音波検査などで肝がんを捉えるにはある程度腫瘍が増大している必要があり、いたずらにサーベイランスの間隔を短縮しても早期病変の発見にはつながらない。限られた医療資源を必要なケースに応じて適正に配分するためにも、サーベイランスを実施する対象と頻度を明確にすることは極めて重要である。
一方、肝炎ウイルスの感染歴がなくても糖尿病や脂肪肝などで肝がん発症リスクが高い場合があり、そういった例へのサーベイランスも必要だ。
こうした観点を踏まえ、本セッションは肝がん診療における効率的なサーベイランスを検証する15演題で構成。SVR後の肝がん発症リスクを評価するスコアリングシステムや、SVR後の経過期間別あるいは肝がん既往の有無別に見た危険因子など、幅広いトピックについて最新の研究成果が報告される。榎本氏は「サーベイランスの終了が可能な因子や、糖尿病や脂肪肝など肝炎ウイルス感染以外の危険因子の扱いなど、さまざまな角度からサーベイランスの特徴が検証される。例えば、治療開始時のFIB-4 indexや治療終了時のAFPのカットオフ値なども含め、具体的なデータが示されることを期待する」と述べる。
また、「議論を通じてリスクの高い集団を抽出し、最終的には発がん率の低下につなげたい」と展望。「SVR達成患者は、がんの早期発見を超えて発症自体を防いでほしいと考えている。いかにリスクの高い集団に介入し、肝がん発症を防ぐか。本セッションを通じてヒントをつかんでほしい」と呼びかけている。