B型肝炎に対する創薬と治療の新たな展開 (New developments in drug discovery research and treatment for hepatitis B)
2021年11月04日 06:45
International Session(Workshop)1 提案:日本消化器病学会
本日 15:00〜17:00 第11会場
司会 | 考藤 達哉氏 国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター |
田中 靖人氏 熊本大大学院・消化器内科学 | |
Discussant | 森川 賢一氏 北海道大大学院・消化器内科学 |
由雄 祥代氏 国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター肝疾患研究部 | |
演者 | Lung-Yi Mak氏 The University of Hong Kong |
Ying-Yi Li氏 Department of Gastroenterology, Kanazawa University Graduate School of Medicine | |
野阪 拓人氏 福井大・2内科 | |
村井 一裕氏 大阪大大学院・消化器内科学 | |
Hung-Chih Yang氏 National Taiwan University College of Medicine | |
井上 淳氏 東北大・消化器内科 | |
出田 貴康氏 岐阜大大学院・臨床検査医学 | |
Nina Le Bert氏 Duke-NUS Medical School | |
五十川 正記氏 国立感染症研究所・治療薬・ワクチン開発研究センター | |
吉田 理氏 愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学 |
B型肝炎の治療では、注射薬のインターフェロン(IFN)製剤と経口薬の核酸アナログ(NA)製剤の登場によりB型肝炎ウイルス(HBV)の複製抑制が可能となったものの、HBs抗原の消失はいまだ困難である。司会の考藤達哉氏は「本セッションはHBV排除に向けた創薬研究と治療法の開発がテーマ。前半ではHBVを標的とした最新の創薬研究、後半では免疫の誘導や増強を主に取り上げる」と説明する。
創薬、免疫研究の2部で構成
B型肝炎治療では機能的治癒が目指されるが、達成にはHBs抗原の消失と完全閉鎖二本鎖(ccc)DNA量の低下、さらには免疫作用によりウイルス感染細胞を破壊する必要がある(図)。考藤氏とともに司会を務める田中靖人氏は「前半の発表では、肝細胞の核内にありHBV増殖に重要な役割を果たすcccDNAを標的とした研究が多い」と話す。
前半では総説的な発表の他、cccDNA保持に重要な遺伝子である宿主因子DOCK11を標的とする治療法、IFNが誘導する蛋白質IFI44Lの投与、細菌の遺伝子修復機構をヒトに応用したCRISPR/Cas9によるcccDNA特異的切断の効率化、CRISPRを用いた塩基置換などの有用性が報告される。香港や台湾からの発表もあり、海外の研究動向について一端をうかがうことができる。
後半では、HBV排除に向け免疫反応を増強する取り組みについて、Toll様受容体(TLR)7アゴニストSA-5の免疫誘導作用、ウイルス特異的T細胞に対するHBs抗原の影響、HBs/HBc抗原含有ワクチンによるHBV感染者でのHBs抗原減少効果など、最新の研究成果が発表される。考藤氏は「HBV排除につながる免疫系の活性化について、各演者の考え方や研究成果を聴講することで、臨床に生かすための問題意識、アプローチ法のヒントがつかめるのではないか」と期待する。
本セッションの意義について、「B型肝炎は世界的に増加している感染症。世界保健機関(WHO)は2030年までにウイルス性肝炎の新規感染者を90%、死亡者を65%減らすとの目標を立てており、達成に向け創薬研究が精力的に行われている」と田中氏。考藤氏も「本セッションでは、創薬、免疫研究のいずれも幅広い研究を取り上げている。また、研究成果を実臨床につなげる考え方についても参考にしてほしい」と呼びかけている。