消化器とCOVID-19:何が起こった、どう備える?
2021年11月05日 06:45
統合プログラム4(シンポジウム)
本日 14:00〜17:00 第6会場
司会 | 田邉 稔氏 東京医歯大大学院・肝胆膵外科学 |
入澤 篤志氏 獨協医大・消化器内科 | |
演者 | 古田 隆久氏 浜松医大附属病院・臨床研究センター |
赤羽 たけみ氏 奈良県立医大・消化器・代謝内科 | |
西田 裕氏 大阪市立大・消化器内科 | |
葛生 健人氏 国立横浜医療センター・消化器内科 | |
春日 良介氏 慶應義塾大・消化器内科 | |
山宮 知氏 獨協医大・消化器内科 | |
上田 貴威氏 大分大・総合外科・地域連携学 | |
東海林 裕氏 豊島病院・外科 | |
川口 直氏 Department of Internal Medicine, Yale School of Medicine、大阪医薬大・一般・消化器外科 | |
林 芳矩氏 大阪大大学院・次世代内視鏡治療学、大阪大大学院・消化器外科学 | |
小原 英幹氏 香川大・消化器・神経内科 | |
小嶋 裕一郎氏 山梨県立中央病院・消化器内科 |
内視鏡検査、内科、外科における課題
本セッションで発表される12演題は、大きく内視鏡検査、内科、外科に関連するものに分類できる。
消化器領域で大きな位置を占める内視鏡検査に関し、赤羽たけみ氏は内視鏡検診を受ける患者の意識の変化(感染への不安、受診控えの増加に伴う検査件数の減少)、古田隆久氏は日本消化器内視鏡学会による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染患者に安全な内視鏡検査を実施するための提言とその成果を報告。小嶋裕一郎氏からはSARS-CoV-2感染の迅速検査体制の確立と内視鏡検査における感染予防効果が発表され、小原英幹氏は内視鏡検査時に発生する飛沫の拡散予防、飛沫曝露低減効果がある器具を用いた検者の感染対策に関する検証結果が示される予定だ。
内科については、緊急事態宣言の発出に伴う生活様式の変化が原疾患に与えた影響に関する3演題、COVID-19が原疾患に及ぼす影響に関する1演題が発表される。西田裕氏は炎症性腸疾患(IBD)患者における生活の変化について調査。65歳以上に比べ65歳未満で変化が大きく、症状の悪化を自覚する割合も大きかったことを明らかにした。急性膵炎(AP)への影響については、外出自粛による飲酒量の減少を背景にアルコール性APが減少した一方、胆石性APは一定の割合で発症していたとの調査結果を山宮知氏が提示、慢性肝疾患への影響については、慢性肝疾患のうち非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病勢増悪が認められ、原因としては運動量の低下、食事量の増加に伴う栄養過多、肥満の増加が想定されたことを春日良介氏が発表する。川口直氏からはCOVID-19が直接的に肝障害を増悪させ、その機序にはインターロイキン(IL)-6が関与するとの後ろ向き研究結果が報告される。
外科関連では、COVID-19流行拡大に伴う受診控えにより内視鏡検査で発見される早期の胃がん、大腸がんが減少し、⼤腸がんでは進⾏したステージで発⾒される例が増加したという葛生健人氏の報告、COVID-19流行拡大により手術件数が減少し、外科医のストレス・不安が増大したことが示された大分県外科医へのアンケート結果が上田貴威氏から示される。また、コロナ重点医療機関において、専門外の診療によるストレスなどから外科医にバーンアウトが見られたという東海林裕氏の調査結果や、林芳矩氏からは腹腔鏡手術時に発生するガス漏出と術者の感染対策についての発表が行われる。
「本セッションにはパンデミック下で内視鏡医、内科医、外科医が経験した困難と、それを乗り越えるために行った工夫が網羅されている」と田邊氏。「発表を通じてポストコロナに向けた改善のヒントも得られるだろう。ぜひ多くの方に参加していただきたい」と呼びかけている。