消化器診療におけるAIの現状と展望
2021年11月05日 06:45
6名の医師が参考になったと回答
統合プログラム3(パネルディスカッション)
本日 9:00〜12:00 第6会場
司会 | 中本 安成氏 福井大・2内科 |
斎藤 豊氏 国立がん研究センター中央病院・内視鏡科 | |
伊藤 雅昭氏 国立がん研究センター東病院・大腸外科 | |
演者 | 岡上 武氏 済生会吹田病院・消化器内科 |
西田 直生志氏 近畿大・消化器内科、日本超音波医学会 | |
佐藤 雅哉氏 東京大附属病院・検査部、東京大・消化器内科 | |
殿塚 亮祐氏 東京医大・消化器内科 | |
桑原 崇通氏 愛知県がんセンター・消化器内科、愛知県がんセンター・システム解析学分野 | |
瀬座 勝志氏 千葉メディカルセンター・消化器内科 | |
上間 遼太郎氏 大阪大大学院・消化器内科学 | |
千野 晶子氏 がん研有明病院・内視鏡診療部 | |
中村 大樹氏 昭和大横浜市北部病院・消化器センター | |
山田 真善氏 国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科 | |
真崎 純一氏 東京医大・消化器・小児外科 | |
篠原 尚氏 兵庫医大・外科(上部消化管外科) |
専門医数少なく、読影負担が大きい
わが国は、人口当たりのCTおよびMRIの台数が他の先進諸国に比べて極めて多く、撮像回数も多い一方、放射線専門医数が少ない(図)。そのため、専門医における読影の負担の大きさが指摘されている。中本氏は「膨大な量の読影をAIに任せることで、われわれは医師にしかできない総合的判断を要する対面診療や、インフォームド・コンセントなどに専念できる」と説明する。
6領域でのAIの性能について12氏が発表
消化器領域は対象臓器が多岐にわたり、診断ツールも前述のCT、MRIに加えてX線、内視鏡、超音波内視鏡、PETなど多様である。本セッションでは、肝、膵、胃、大腸、結腸、結合組織に関し、12人の演者がAI技術を用いた診断支援システムついて発表する。
肝領域では、岡上武氏が単純性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の鑑別基準である肝生検に代わってスクリーニングおよび予後を規定する線維化ステージを同定するAIシステムを開発。西田直生志氏は、超音波Bモード検査による肝腫瘍診断を支援するAIシステムを開発しており、両氏はそれらの成績を発表する。佐藤雅哉氏は、ラジオ波焼灼術(RFA)後の肝がん再発リスクを患者別に定量化評価する機械学習による検討結果を報告する。
膵領域では、現時点でAI研究が限定的な膵超音波内視鏡(EUS)画像について、殿塚亮祐氏がconvolution neural networkという数理モデルを用いた機械学習による膵がん検出システムの性能を発表する。桑原崇通氏は、AIの学習に不向きとされる不均衡データが多い膵管がんについて、EUS画像を用いたAIによる膵腫瘍診断の有用性を報告。瀬座勝志氏は単一の画像診断法では診断困難な膵腫瘍に対し、複数の画像情報と臨床情報によるディープラーニング(深層学習)の効果を報告する。
胃領域では、早期胃がんの深達度診断に細径プローブを用いたEUSが有用とされるものの、専門医でも読影は容易でない。上間遼太郎氏らは、AIを用いた早期胃がんEUS深達度診断システムを開発、熟練医と比べた診断能を発表する。
非専門医とも臨床的課題を共有し、開発加速へ
大腸領域では千野晶子氏が、大腸病変を検出する内視鏡診断支援装置の性能評価における多施設共同研究の成績を発表する。中村大樹氏らは、narrow-band imaging(NBI)拡大画像に対応したコンピュータ診断支援(NBI-CADx)を開発しており、今回は大腸病変における腫瘍・非腫瘍の自動診断能を報告。山田真善氏らは、大腸内視鏡検査中に大腸がん/前がん病変の特徴を自動検出する診断支援システムの性能評価試験成績を、真崎純一氏は結腸がん根治切除後の再発に対し、機械学習を導入した根治切除の治療方針決定支援システムの成績を、それぞれ報告する。
剝離操作の重要な解剖ランドマークについて、篠原尚氏は消化管臓器の隙間にある剝離層を構成する結合組織線維と、術中の損傷が合併症につながる個別臓器を自動提示するAI支援システムを開発。結合組織線維と膵実質の自動提示システムの成績を発表する。
中本氏によると、消化器の各領域に特化したAIによる診断支援ツールの開発が進む一方、医師が推論するような知能レベルには至っていないなどの課題もあるという。「AI開発は、診療現場で遭遇する課題を整理することでさらに進展する。医療AIに携わっている医師だけでなく、課題を抱えている現場の医師、AI技術者らにより現状の臨床的課題を共有し、AI開発を加速させるセッションにしていきたい」と述べ、広く参加を呼びかけている。