局所進行直腸癌に対する治療戦略 ―側方リンパ節郭清・術前治療・ watch-and-waitの位置付け― (Treatment strategy for locally advanced rectal cancer - LLND・NACRT・NAC・watch-and-wait)
2021年11月05日 06:45
4名の医師が参考になったと回答
Strategic International Session (Symposium)2 提案:日本消化器外科学会
本日 9:30〜11:30 第9会場
司会 | 正木 忠彦氏 清水ヶ丘病院 |
山口 茂樹氏 東京女子医大・消化器外科 | |
演者 | 小西 毅氏 The University of Texas MD Anderson Cancer Center |
浜部 敦史氏 札幌医大・消化器・総合、乳腺・内分泌外科 | |
諏訪 雄亮氏 横浜市立大附属市民総合医療センター・消化器病センター | |
岡本 亮氏 明和病院・消化器外科 | |
高橋 秀和氏 大阪大大学院・消化器外科 | |
小倉 淳司氏 名古屋大大学院・消化器外科 |
局所進行直腸がんに対する根治治療は外科手術である。一方、局所進行直腸がんに対する放射線治療と薬物治療は、補助治療として位置付けられてきた(図)。欧米では術前放射線療法(RT)、さらには術前化学放射線療法(CRT)が長らく標準治療とされており、日本でも術前治療を日常臨床に導入する施設が増えている。
さらに、近年の放射線治療と薬物治療の著しい進歩を背景に、術前CRTに加えて全身化学療法を行うTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)の開発が欧米を中心に急速に進んでいる。TNTにより病理学的完全奏効に至った症例に対しては、早急な手術を回避し経過観察をするwatch-and-wait療法も提唱され、注目されている。
また手術不能例に対し、従来は延命や症状緩和を目的とした姑息治療が行われていたが、治療法の進歩により、根治切除可能となる症例も増加している。こうした症例に対しては、従来の姑息治療から治癒を目指した治療(conversion therapy)が行われるようになってきている。
このように、局所進行直腸がんの治療選択肢が急速に広がる一方で、最適な治療選択肢についての明確なコンセンサスは得られていない。
選択肢が広がる局所進行直腸がん治療
本セッションでは、まず小西毅氏がTNTやwatch-and-wait療法による集学的治療と側方リンパ節郭清を組み合わせた治療の取り組みなどについて紹介する。
浜部敦史氏は、側方リンパ節転移のリスクを術前のMRI画像を基に分類する有効性について検証。術前CRTについては、RTを短期、長期のいずれで行うかという課題があるが、諏訪雄亮氏と岡本亮氏が、短期照射と長期照射の治療成績についてそれぞれ報告する。
さらに高橋秀和氏は、術前化学療法(NAC)について、ダブレットもしくはトリプレットのレジメンによる治療成績について報告。最後に小倉淳司氏が、NACの効果予測因子としての「lymphocyte ratio」について発表する予定である。
「局所進行直腸がんの治療は大きく変わろうとしている。TNTの登場により、従来は手術一辺倒であった治療が、RTと薬物治療を組み合わせることにより、一定数に手術と同等の良好な予後が得られる可能性が高くなってきた」と山口氏。ただし、手術を行わなければ予後改善が期待できない症例もいまだ存在し、その見極めが必要となる。同氏は「今後の新しい治療を目指すに当たり、それぞれの施設や分野での取り組み、治療成績などの開示が重要になる」と本セッションの発表に期待を寄せている。