ナビゲーション手術の現状と展望
2021年11月05日 06:45
7名の医師が参考になったと回答
パネルディスカッション5 提案:日本消化器外科学会
本日 14:00〜16:30 第3会場
司会 | 堀口 明彦氏 藤田医大ばんたね病院・消化器外科 |
齋浦 明夫氏 順天堂大大学院・肝胆膵外科学 | |
演者 | 杉本 真樹氏 帝京大冲永総合研究所 |
中沼 寛明氏 大分大・消化器外科 | |
齋藤 裕氏 徳島大・消化器・移植外科 | |
高本 健史氏 国立がん研究センター中央病院・肝胆膵外科 | |
草野 智一氏 昭和大・消化器・一般外科 | |
瀬尾 智氏 京都大・肝胆膵・移植外科 | |
浦出 剛史氏 神戸大大学院・肝胆膵外科学 | |
大矢 浩貴氏 横浜市立大市民総合医療センター・消化器病センター外科 | |
落合 健太郎氏 東京大・腫瘍外科 | |
柳 舜仁氏 川口市立医療センター・消化器外科 |
ナビゲーション手術に関しては、これまでマルチスライスCT(MDCT)が多用されてきたが、腫瘍部位の同定が容易なインドシアニングリーン(ICG)蛍光法の普及が進み、現在ではがん切除時の主流となっている。司会の堀口明彦氏は「肝胆膵などの臓器や血管をホログラムとして空中に描出し、手術手技のシミュレーションに生かす技術の実用化も進んでいる。本セッションはナビゲーション手術の最先端を学ぶ貴重な機会になるだろう」と話す。
手術の安全性およびがん切除の根治性向上を目指す
杉本真樹氏は、現実空間と仮想空間を融合させた複合現実(Mixed Reality;MR)を活用し、患者の臓器や血管の3D像と術者の体動や視線などの付加情報を統合する手術ガイドシステムを開発。ホログラムを自在に操作しながら臓器の形状や穿刺ルート、切離ラインなどを視覚的に確認できる同システムの有用性、活用シーンについて発表する。同じくホログラフィをテーマとするのが齋藤裕氏。術中に死角となる裏側の臓器の形状・状態などを確認しながら、経肛門的直腸間膜切除術(TaTME)や系統的肝切除におけるグリソン一括処理などへの有用性を提示する。
中沼寛明氏は腹腔鏡下胆囊摘出術における重篤な合併症の回避を目的に、熟練外科医の経験を蓄積した人工知能(AI)が切離ラインなどを提示する術中ランドマークAI教示システムを構築。検証結果を報告する。高本健史氏もAIを活用し、術前CT画像と術中超音波を自動連動させ、1cm以下の肝腫瘍同定が可能かを検証する。
静注したICGが腫瘍細胞中に長時間残留し、蛍光する性質を腫瘍の同定に利用するICG蛍光法は、5演題の発表を予定。草野智一氏はICG蛍光法や空間位置情報システムを搭載した超音波診断装置による腫瘍同定の他、ホログラフィを活用した胆がん門脈枝への穿刺ルート同定の成績を報告。瀬尾智氏は膵頭十二指腸切除術における下膵十二指腸動脈の可視化の有用性を検討する。
下部消化管手術において縫合不全の原因となる血流不全部位の同定を目的に、ICGを用いた血流評価を検証したのが大矢浩貴氏と柳舜仁氏。大矢氏はICGを用いたリンパ流の可視化によるリンパ節郭清や、蛍光尿管カテーテルを用いた尿管損傷の回避を含めた手術成績を報告し、柳氏は胃および大腸がんに対する術前内視鏡下蛍光クリップマーキングによる病変確認などについても発表する。落合健太郎氏は進行下部直腸がんに対する腹腔鏡下側方リンパ節郭清に対し、ICG蛍光法に赤外線式位置計測装置を用いて腹腔鏡画像と統合し、3Dイメージを描出する術中ナビゲーションシステムの安全性と有用性を検討する。
浦出剛史氏は、血管内超音波とハイパースペクトルイメージングを用いたリアルタイムナビゲーションを考案。ICG蛍光法で必要となる放射線を用いることなく、ブタ肝臓で虚血域と灌流域を識別しながら肝切除を施行した結果を報告する。
堀口氏は「手術の安全性およびがん切除における根治性向上のため、ナビゲーション手術の需要はいっそう高まっている。ロボット支援下手術に不可欠な技術となりつつあるナビゲーション手術は、今後も目覚ましい進歩を遂げながら普及が進むことが予想される」と、聴講を呼びかけている。