消化器診療におけるサルコペニアの意義
2021年11月06日 06:40
統合プログラム5(パネルディスカッション)
本日 9:00〜12:00 第6会場
司会 | 中牟田 誠氏 国立九州医療センター・肝臓病センター |
瀬戸 泰之氏 東京大大学院・消化管外科学 | |
演者 | 高橋 慶太氏 東京慈恵会医大・消化器外科 |
菊地 覚次氏 岡山大・消化器外科 | |
木内 純氏 京都府立医大・消化器外科 | |
奥川 喜永氏 三重大・ゲノム診療科、三重大大学院・消化管・小児外科学 | |
阿部 真也氏 東京大・腫瘍外科 | |
安田 剛士氏 京都府立医大・消化器内科 | |
冨永 顕太郎氏 新潟大・消化器内科 | |
廣岡 昌史氏 愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学 | |
高田 ひとみ氏 山梨大・消化器内科 | |
中野 暖氏 久留米大・消化器内科 | |
菊田 和宏氏 東北大大学院・消化器病態学 | |
上村 真也氏 岐阜大・1内科 |
筋肉量が減少し、筋力および身体機能が低下している状態を指すサルコペニアは、さまざまな疾患の病態形成や予後に深く関連することが知られている。消化器診療におけるサルコペニアの意義について、多方面から個別的かつ包括的に捉えることを目的とした本セッション。司会の中牟田誠氏は「近年、筋肉は代謝やマイオカインの分泌機能などを有することから、1つの臓器として捉えられ始めている。サルコペニアは非常に重要な研究課題だが、筋肉機能と消化器疾患の予後の関係についてのデータはまだ十分に集積されておらず、実態は明らかになっていない。本セッションで最新の知見を取り上げ、今後の研究の発展に寄与したい」と強調する。
統合プログラムらしく幅広い領域を網羅
本セッションは12演題で構成される。前半は、食道がんにおける術前のサルコペニアが術後予後に与える影響や、大腸がんの腫瘍宿主クロストークによる全身性炎症反応とサルコペニア惹起の機序など、消化器がんとサルコペニアの関連について検討した5つの演題が並ぶ。特に菊池覚次氏の「患者教育と栄養強化プロトコールによる胃癌術後サルコペニア予防効果」について、中牟田氏は「サルコペニアと予後について検討した研究は数多く存在するが、予防に関する研究はまだ少ないため、興味深い発表になるだろう」と期待を込める。
中盤には、腸内細菌叢とサルコペニアに関する2演題が発表される。「腸内細菌叢は近年注目のトピック」と中牟田氏。「特に三糖類の1-kestoseがサルコペニア患者の腸内細菌叢と筋肉量に与える影響を検討した冨永顕太郎氏の演題は、サルコペニアに対する新たなアプローチとして注目している」と述べる。
後半は肝臓・膵臓関連の5演題となっており、肝硬変患者における脾臓摘出および部分的脾動脈塞栓術(PSE)のサルコペニア抑制効果や、慢性膵炎患者における身体活動量と栄養摂取量の違いが筋肉量に及ぼす影響などが報告される予定だ。
中牟田氏は「各疾患を臓器ごとに捉えるだけでなく、多臓器との関連(多臓器間クロストーク)において把握することが重要(図)。その意味で、サルコペニアを通して各種病態や治療を検討することは極めて意義深いといえる」と話す。その上で、「参加者全員に関係するセッションとなっているので、ぜひとも多くの方に聴講していただき、活発な討論を期待したい」と呼びかけている。