イノベーションをもたらす内視鏡機器開発(Development of innovative endoscopic devices)
2021年11月06日 06:40
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Strategic International Session(Workshop)1 提案:日本消化器内視鏡学会
本日 9:00〜12:00 第9会場
司会 | 井上 晴洋氏 昭和大江東豊洲病院・消化器センター |
山本 博徳氏 自治医大・消化器内科 | |
演者 | Khek-Yu Ho氏 National University of Singapore |
島村 勇人氏 昭和大江東豊洲病院・消化器センター | |
小塚 和博氏 香川大・消化器・神経内科 | |
吉田 拓馬氏 京都府立医大大学院・消化器内科学 | |
鷹尾 俊達氏 神戸大附属病院・消化器内科 | |
藤本 愛氏 慶應義塾大・腫瘍センター・低侵襲療法研究開発部門 | |
佐々木 文郷氏 鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学 | |
堀口 徳之氏 藤田医大・消化器内科 | |
Sergay V. Kantsevoy氏 Mercy Medical Center | |
平塚 孝宏氏 大分大・消化器・小児外科、有田胃腸病院 | |
Amit Maydeo氏 Baldota Institute of Digestive Sciences, Global Hospital | |
北野 雅之氏 和歌山県立医大・2内科 | |
Kenneth F. Binmoeller氏 Interventional Endoscopy Services, California Pacific Medical Center | |
特別発言 | 樋口 和秀氏 大阪医薬大・2内科 |
日本の内視鏡治療は評価が高く、機器開発および診断・治療法のいずれにおいても世界を牽引する存在感を示している。第102回日本消化器内視鏡学会総会大会長の山本博徳氏も司会を務める本セッションでは、最新の内視鏡機器開発の一端が紹介される(図)。ともに司会を務める井上晴洋氏は「近年の機器開発の動向を通じ、内視鏡医療が目指す革新的なコンセプトを伝えたい」と述べる。
診断、治療、縫合などに関する最新機器を紹介
セッション冒頭の基調講演は、磁気支援カプセル内視鏡(MACE)がテーマ。Khek-Yu Ho氏が搭載バルーンを膨張・収縮させ、肥満治療に用いた経験を報告する。
診断については、新規の試みが2件紹介される。島村勇人氏は、内視鏡的に胃食道逆流症(GERD)診断を行う最新機器の内視鏡的内圧測定統合システム(EPSIS)について報告。堀口徳之氏は、プローブ型共焦点レーザー顕微内視鏡(pCLE)を紹介する。従来、胃がんのHER2検査において内視鏡は生検標本の採取に用いられていたが、pCLEは単体でHER2検査が行えるという。
治療では、内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)に用いられる粘膜下注入剤の粘度と性能の関係(吉田拓馬氏)、偶発症予防が期待される創傷被覆剤における新素材の被覆能力(佐々木文郷氏)が報告。さらに閉塞性大腸がんにおけるステント治療後の再狭窄予防について、蛇腹構造を持つカバーステントと従来のステントとの比較検討(平塚孝宏氏)が報告される予定だ。
内視鏡医療で日本が他国に後れを取る唯一の分野が、縫合であろう。そこで本セッションでは、全層縫合に用いるOverStitchの開発に携わったSergay V. Kantsevoy氏と、内視鏡的縫合の第一人者であるAmit Maydeo氏が講演を行う。井上氏は「精緻を求める日本人とは異なる感性で縫合デバイス開発に挑む両氏の話は一聴の価値がある」と指摘する。
超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)は手術が難しい胆管がん患者の福音となったが、手技や機器的な課題が残る。そこで、北野雅之氏がステント留置など2点の解決を図ったデバイスの成績を紹介。EUSでは、口径が大きく逸脱しにくい構造の金属ステント(LAMS)を用いた消化管縫合の報告(Kenneth F. Binmoeller氏)も予定されている。
内視鏡治療をサポートする機器の発表も見逃せない。小塚和博氏はオーバーチューブ被覆内視鏡で緊急内視鏡時の胃残留物吸引を行う方法、鷹尾俊達氏は内視鏡時に口述した所見を音声認識しリアルタイムに記録するシステム、藤本愛氏は内視鏡画像の色を変換し術野の視認性を高める赤色光観察(RDI)についてそれぞれ報告する。これらは内視鏡医の負荷を軽減、作業時間の短縮に寄与すると考えられる。最後に、内視鏡医学に造詣の深い樋口和秀氏が特別発言で締めくくる。
「切開せずに胃がんを診たい」という考えから始まった内視鏡医療は、その低侵襲性で活躍の場を広げている。「内視鏡医には研究・臨床のヒントに、非専門医には内視鏡医学の目指す将来像を感じてほしい」と井上氏は聴講を呼びかけている。