死亡率減少を目指した大腸がん検診
2022年10月27日 06:30
72名の医師が参考になったと回答
パネルディスカッション4 提案:日本消化器がん検診学会
10月27日 14:30〜16:30 第10会場(福岡国際会議場 501)
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日本では欧米に先駆けて1992年に対策型がん検診が始まった。しかし、欧米では大腸がんの年齢調整死亡率は右肩下がりに減少しているのに対し、日本では近年下げ止まりの状態にある(図)。従来の便潜血検査のみに頼るのではなく、米国のように大腸内視鏡検査を組み入れるなど、多様なモダリティを柔軟に取り入れる改革が求められている。本セッションは、指定演題3本と個別演題5本を通じ、広い視座に立って今後の大腸がん検診の在り方を考えることが狙いだ。
図. 大腸がん年齢調整死亡率の推移(日本)
(国立がん研究センター)
大腸内視鏡検査組み入れに向け、エビデンスと課題を整理
司会を務める松田尚久氏は、松田一夫氏による1つ目の指定演題について、「便潜血検査を用いた大腸がん検診の現状と課題を整理しつつ、英国や米国との比較を盛り込みながら、今後の日本における大腸がん検診の改善に向けた突破口が示されるのでは」と期待を寄せる。
続いて、現在改訂に向けた作業が進められている『有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン(GL)』に関連する内容が阿部浩一郎氏から報告される。2005年に作成された現行GLにおける推奨レベル「A」は便潜血検査のみで、大腸内視鏡検査などはいずれも「C」である。しかし、改訂GLでは大腸内視鏡検査の推奨レベルが上がることが見込まれるため、重要なレビューとなる。また大腸内視鏡検査を行っても発見が難しいPost-colonoscopy Colorectal Cancer(PCCRC)について、辻重継氏が臨床病理学的特徴の検討結果を報告する。では、PCCRCまたはInterval cancer(中間期がん)を少しでも減らすにはどうすればよいのか。打開策の1つとして注目される血清RNA診断の有用性について、2つ目の指定演題として盛一健太郎氏が検討結果を発表する。
大腸がん検診の最終的な目的は死亡率の減少だ。検診の内容や間隔に関する議論も重要だが、原病死に至る大腸がん症例の特徴を理解することも不可欠である。400例超の大腸がん症例の5年後の予後について、依光展和氏が原病死に至った症例にフォーカスした報告を行う。続く演題は司会の松田尚久氏が中心となった研究で、堀田欣一氏が報告する。大腸内視鏡検査で発見されたポリープ切除による大腸がん罹患率の抑制効果を検討した多施設共同研究Japan Polyp Studyの中間報告であり、松田氏は「極めてインパクトのある結果が得られたので注目していただきたい」と意気込みを示す。
大腸内視鏡検査におけるエビデンスがそろう中、人工知能(AI)ソフトウエアの導入が内視鏡医の腫瘍検出力にどのような影響を与えるかという新たな試みも興味深い。加藤駿氏は、AIのサポートがさらなる死亡率低減に向けた1つの糸口となるかを考察する。本セッションの締めとなる3つ目の指定演題では、便潜血検査と大腸内視鏡検査を組み合わせた今後の大腸がん検診の可能性と課題について、小林望氏が整理する。
松田氏は「大腸がん検診における死亡率減少の下げ止まりをどのように打破すべきか。便潜血検査に大腸内視鏡検査を組み入れることが現実的と思われるが、具体的な社会実装に向けた議論が必要である。日常臨床で患者を診ることと同様、検診を欠くことはできない。本セッションに参加し、検診に目を向ける契機としてほしい」と呼びかけている。
第65回 日本消化器病学会大会 | 会長 名越 澄子 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 |
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第106回 日本消化器内視鏡学会総会 | 会長 塩谷 昭子 川崎医科大学 消化器内科 |
第27回 日本肝臓学会大会 | 会長 島田 光生 徳島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第21回 日本消化器外科学会大会 | 会長 大段 秀樹 広島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第61回 日本消化器がん検診学会大会 | 会長 日山 亨 広島大学保健管理センター |