メニューを開く 検索

トップ »  医療ニュース »  2022年 »  学会レポート »  Etiologyから見た肝細胞癌の病態解明と治療戦略

第30回 日本消化器関連学会週間(JDDW 2022)

Etiologyから見た肝細胞癌の病態解明と治療戦略

2022年10月27日 06:30

192名の医師が参考になったと回答 

シンポジウム3 提案:日本肝臓学会

10月27日 14:30~17:00 第4会場(福岡国際会議場 メインホール)

司会
黒崎 雅之 武蔵野赤十字病院・消化器科
建石 良介 東京大大学院・消化器内科学
基調講演
田中 真二 東京医歯大・分子腫瘍医学
演者
土屋 淳 東京医歯大・消化器内科
村井 大毅 大阪大・消化器内科
雨宮 健司 山梨県立中央病院・ゲノム解析センター
福本 剛 東京大附属病院・消化器内科
大澤 玲於奈 山梨大・1内科
西尾 太宏 京都大・肝胆膵・移植外科
畑中 健 済生会前橋病院・消化器内科
杉本 理恵 国立九州がんセンター・消化器肝胆膵内科
土谷 薫 武蔵野赤十字病院・消化器科
特別発言
中川 勇人 三重大大学院・消化器内科学

 従来、肝がんの主因はB型またはC型肝炎ウイルスの持続的な感染だったが、治療薬の劇的な進歩により、近年はウイルス感染を伴わない非B非C型肝がんの割合が増加している(図1)。その中心は飲酒や肥満、糖尿病などが原因となる代謝関連肝がんで、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から肝がんに至る例もあり、新たな問題となっている。

図1. 肝がんの病因の違い、発がんまでの過程

 そうした中、肝細胞がんの薬物治療にも目覚ましい進歩が見られている。2020年9月に抗PD-L1抗体アテゾリズマブ+血管新生阻害薬ベバシズマブ併用療法(複合免疫療法)が切除不能肝細胞がんを適応として承認され、標準治療に追加された。さらに注目すべきは、遺伝子解析技術が飛躍的に向上したことで個々の遺伝子変異や発現プロファイルが再発予測および薬剤選択の指標となり、がんのサブタイプ分類も進んでいる点だ。司会の黒崎雅之氏は「肝がんの背景疾患が大きく変わると同時に、がんのサブタイプに応じた最適な治療法としてプレシジョン・メディシン(精密医療)の実現が期待されている」と指摘する(図2)。

図2. 肝がんに対する薬物治療の変遷、今後の展望

(図1、2とも編集部作成)

がんのサブタイプに応じた治療法の開発が加速

 本セッションでは、冒頭の基調講演で田中真二氏が肝細胞がんの分子生物学的、免疫学的なサブタイプ分類の最新トピックスを紹介し、それを踏まえた治療戦略について展望する。続いて、現時点で有力視されているがんのサブタイプおよび特徴に関する3演題、背景疾患の違いによる肝細胞がんの予後に関する3演題、肝細胞がんの背景疾患や合併症が複合免疫療法の有効性に及ぼす影響に関する3演題が行われ、最後に中川勇人氏が特別発言として議論を総括する。

 肝細胞がんのサブタイプでは、村井大毅氏が腫瘍内脂肪蓄積を特徴とする脂肪含有肝がんについて報告。雨宮健司氏は、Wnt/β-カテニンシグナル異常を有する腫瘍結節の動的変化を検討。結節ごとの薬剤反応性の違いを個別化治療にどのようにつなげるかを考察する。B型肝炎ウイルス遺伝子はヒト染色体に直接組み込まれるという特徴を有し、肝硬変を経ずに発がんに至る例が多い。土屋淳氏は、B型肝がんの発がんメカニズムに関する新知見を発表する。

 急増するNAFLDやNASHの予後には不明点も多く、発がん予防が急務である。福本剛氏は非B非C型肝がんとB型・C型肝がんで予後を比較検討した結果を報告する。大澤玲於奈氏は肝線維化非進展例でも一部が発がん至ることから、線維化マーカーFIB-4 indexを活用し、高値例に定期的な画像診断を行う意義を提示する。西尾太宏氏は脂肪肝の新概念として提唱された代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)が非B非C型肝がんの肝移植例のetiologyに関連し、予後に影響を及ぼす可能性について発表する予定だ。

非B非C肝がんに対する複合免疫療法の留意点

 肝がんの薬物治療で注目度が高い複合免疫療法だが、有効性には肝予備能や背景疾患が影響を及ぼすため、薬剤の使い分けが重要となる。非B非C型肝がんに対する複合免疫療法は有効性に乏しい可能性が指摘されていたが、畑中健氏は323例を対象に検証し、良好な結果が得られたことを報告する。土谷薫氏は、etiologyによる複合免疫療法の有効性の違いを検討、臨床的意義を考察する。黒崎氏は「非B非C型肝がん患者に複合免疫療法を用いる際には、患者の合併症を踏まえつつ副作用に留意してほしい」と注意を促す。

 杉本理恵氏は、NASH由来の肝細胞がんにおいて免疫複合療法により肝機能の悪化傾向が見られたことを報告する。黒崎氏は「薬剤の使い分けという点で注目されるデータ。今後、多施設で検証が必要だろう」と解説した。

 最後に同氏は「近年、従来とは全く異なる背景疾患を有する肝細胞がんが増えている。肝臓専門医は、発がんの病因に応じて個々の患者に最適な治療法を検討する時期を迎えており、その探索が本セッションの狙い」と強調。「変わり行く肝疾患、新薬の登場、ゲノム医療・診断の進展という目まぐるしい流れの中で、現在の到達点や課題を明らかにしたい」と述べ、多くの参加を呼びかけている。

第65回 日本消化器病学会大会 会長 名越 澄子 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科
第106回 日本消化器内視鏡学会総会 会長 塩谷 昭子 川崎医科大学 消化器内科
第27回 日本肝臓学会大会 会長 島田 光生 徳島大学大学院 消化器・移植外科学
第21回 日本消化器外科学会大会 会長 大段 秀樹 広島大学大学院 消化器・移植外科学
第61回 日本消化器がん検診学会大会 会長 日山 亨 広島大学保健管理センター

無料でいますぐ会員登録を行う

【医師限定】

初回登録で500円分のポイントをもれなく進呈!

(11月末迄/過去ご登録のある方を除く)

  • ・ ご利用無料、14.5万人の医師が利用
  • ・ 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
  • ・ ギフト券に交換可能なポイントプログラム
  • ・ 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ

ワンクリックアンケート

お盆はお墓参り・掃除に行かれますか?

トップ »  医療ニュース »  2022年 »  学会レポート »  Etiologyから見た肝細胞癌の病態解明と治療戦略