直腸癌手術における最適なアプローチ法:Lap vs Robot vs Ta
2022年10月29日 06:30
276名の医師が参考になったと回答
ワークショップ15 提案:日本消化器外科学会
10月29日 9:00〜12:00 第10会場(福岡国際会議場 501)
司会 |
|
||
|
|||
基調講演1 |
|
||
基調講演2 |
|
||
演者 |
|
||
|
|||
|
|||
|
|||
|
|||
|
|||
|
|||
|
直腸は骨盤という半閉鎖的空間に位置する特性上、十分な視野が得られにくく手術の難易度が高い。また、周囲の自律神経や直腸下部に位置する肛門の機能温存が求められることに加え、血管やリンパ管に富むことから転移しやすく、骨盤腔内のリンパ節や周囲の臓器摘出が必要となる症例も少なくない。そのため、術者には極めて高度な技術力が要求される。本ワークショップでは現在主流となっている腹腔鏡手術、ロボット支援手術、経肛門的全直腸間膜切除術(transanal total mesorectal excision;taTME)を比較し、適切な症例選択や技術的問題点、リスクなどをディスカッションする。司会の猪股雅史氏は「各アプローチのエキスパートである先生方と最適な術式について議論していただきたい」と述べる。
経腹・経肛門の同時アプローチやロボット支援手術との併用も
かつて直腸がんに対しては主に開腹手術が行われていたが、現在は腹腔鏡手術が約8割を占める。さらに腹腔と肛門の2カ所からカメラおよび鉗子を挿入して同時に切除・再建を行うtaTMEや腹腔操作で手術用ロボットを用いるロボット支援手術が普及し、直腸がん手術のアプローチは多様化している。猪股氏は「これらのアプローチは早くも導入期を過ぎつつあり、症例ごとに最適な選択を議論すべき段階に至った(図)」と解説する。
図. 直腸がん手術のアプローチ法
(猪股雅史氏提供)
冒頭、絹笠祐介氏がロボット支援手術の国内外における成績と最新知見を紹介する。大腸がんに対するロボット支援手術は2018年の保険収載以降に急速に普及し、いまや欠かせない選択肢である。長谷川傑氏は、3つの術式の中で唯一の肛門側アプローチであるtaTMEの有用性と課題点などを考察する。ロボット支援手術の登場により経肛門アプローチの役割は低下するとの声があるものの、巨大腫瘍例や狭骨盤例など経腹アプローチが困難な例に有用であり、大腸外科医は知っておくべきだという。
次に、下部直腸がんに対する各術式の成績を3人が報告。諏訪雄亮氏はロボット支援手術とtaTMEで出血量や術後合併症などの短期成績を比較、久下博之氏はロボット支援手術とtaTMEの肛門側断端距離における成績を報告する。松田武氏は従来の腹腔鏡手術とtaTMEの成績を比較し、安全に行うための工夫を紹介する。猪股氏は「まずは各アプローチの客観的、科学的な治療成績を知ってほしい」と述べる。
術式の比較に続き、具体的な症例ごとの最適アプローチに迫る。畑泰司氏は肛門に最も近い部位を切除する内肛門括約筋切除術(ISR)におけるtaTMEの必要性を分析する。低位前方切除術およびdouble stapling technique(DST)吻合を行う際の最適な術式については、永井雄三氏が検討結果を報告。植村守氏は、直腸がんが進行し周囲の膀胱や前立腺、子宮などに浸潤を伴う例への骨盤内拡大手術に焦点を当て、至適アプローチを明らかにする。
さらに、最近需要が高まりつつあるハイブリット手術の治療成績について、石井雅之氏と柏原秀也氏が発表する。腹腔側をロボット支援操作で施術し、同時に経肛門アプローチも行うロボット支援下taTMEでは互いの欠点を補い、メリットを組み合わせることで高精度の手術が可能となる。肛門機能温存に加え手術時間の短縮も期待されるが、残された課題についても探求するという。
直腸がんは再発しやすく、再発時の標準治療は薬物療法であったが、現在は再手術による再発巣の摘出が治療成績の向上に寄与することが分かってきた。「低侵襲、機能温存という制約がある中、術式の選択肢が増えた昨今、術者には確かな技術力が求められる」と猪股氏。「がんの根治に加え、機能温存が重要なポイントである直腸がん手術は、低侵襲治療において最も注目される領域。ぜひ参加して今後の治療に生かしてほしい」と呼びかけた。
第65回 日本消化器病学会大会 | 会長 名越 澄子 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 |
---|---|
第106回 日本消化器内視鏡学会総会 | 会長 塩谷 昭子 川崎医科大学 消化器内科 |
第27回 日本肝臓学会大会 | 会長 島田 光生 徳島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第21回 日本消化器外科学会大会 | 会長 大段 秀樹 広島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第61回 日本消化器がん検診学会大会 | 会長 日山 亨 広島大学保健管理センター |