消化器癌に対する免疫療法の実態
2022年10月29日 06:30
252名の医師が参考になったと回答
統合プログラム5(パネルディスカッション)
10月29日 9:00〜12:00 第3会場(福岡サンパレス パレスルーム)
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がん免疫療法は、消化器がんに対しても高い有効性が期待されている。中でも、2020年9月に切除不能な肝細胞がんに対して承認された抗PD-L1抗体アテゾリズマブ+抗VEGF抗体ベバシズマブ併用療法は、承認から2年が経過し実臨床でのエビデンスが蓄積されつつある。本セッションでは肝細胞がんの話題を中心に、消化器がんにおける免疫療法の最新知見を紹介する。
肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の演題は5題
がん免疫療法は奏効が期待できる患者とできない患者が存在するため、事前の治療効果予測が望まれる。そこで期待されるのが組織標本やリキッドバイオプシーを用いたバイオマーカーの同定とそれらに基づく治療効果の予測だ。血液検体の採取は侵襲性が低いため、治療経過を継続してフォローしやすい。一方、組織検体の採取は侵襲性が高いものの、より詳細なデータが得られやすい。
松前高幸氏は、リキッドバイオプシーを用いて肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の治療効果を予測。リキッドバイオプシーによるインターロイキン(IL)-6や血中循環腫瘍DNA(ctDNA)測定が治療効果予測に有用な可能性を示す。中馬誠氏は、同併用療法の奏効例 vs. 増悪例で各ケモカインの治療血中前濃度を比較し、奏効例では治療前におけるケモカインCCL5、CXCL9、12高値、CXCL8低値だったとする成績を、永井英成氏は増悪例で治療前における末梢血中の可溶性MICA※(sMICA)が高値であったことをそれぞれ報告する。
小笠原定久氏は、組織標本から得られた腫瘍微小環境の評価に基づき、背景疾患別に同併用療法の有効性を検証。有意差は認められなかったものの、ベバシズマブの休薬や中断が同併用療法の長期継続例において有効性を低減する可能性があることを報告する。西田直生志氏も同じく組織標本を用いてゲノム解析を実施。さらにリキッドバイオプシーにより腫瘍微小環境と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与下における再発リスクを解析した結果を示す。
食道がん、胃がんのデータは今後に期待
食道がんについては、林芳矩氏が抗PD-1抗体ニボルマブで治療した進行・再発食道扁平上皮がん患者の栄養指標から、ニボルマブ奏効とサルコペニアなどとの関連を検証。非増悪患者では増悪患者に比べて予後栄養指数が高く、サルコペニアの割合が少なかったことを報告する。
安藤孝将氏は、進行胃がん患者の転移巣別にICIの効果を後ろ向きに解析。肝転移は他臓器への転移と比べて最も予後が不良で、ICI治療における全身状態の悪化の予測因子になりうることを紹介する。
セッションの最後に松林宏行氏が、消化器がんにおけるICIのコンパニオン診断として、マイクロサテライト不安定性(MSI)検査とミスマッチ修復蛋白質の免疫染色(MMR-IHC)との一致率に関する研究結果を報告。一致率は大腸がん、胃がん、十二指腸/小腸がんではほぼ100%だったのに対し、膵胆道がんで87.5%とやや低かったという。
司会の河野浩二氏は「切除不能な肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の承認から一定期間が経過し、多くの演題が集まった。奏効例と非奏効例を予測するバイオマーカーが整理され、治療戦略の方向性が見えてくるのではないか。バイオマーカー同定におけるリキッドバイオプシーまたは組織標本の使い分けにも注目したい」と展望。胃がんや食道がんの演題については、「ICIのデータはこれから充実してくると思われる。今回採用された演題は数少ないフレッシュなデータであり、期待したい」と述べた。
- ※ 主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI関連鎖A
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