IBD病態を踏まえた今後の治療ストラテジー
2022年10月29日 06:30
354名の医師が参考になったと回答
ワークショップ6 提案:日本消化器病学会
Report 10月28日(金)
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潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)などに代表される炎症性腸疾患(IBD)。近年では病態の解明が進み、新たな分子標的薬が次々に登場している。しかし、病態が複雑で治療薬の反応性は患者ごとに異なるため、どの薬剤を使うべきか選択に苦慮する臨床医も少なくない。本セッションでは、各演者がそうした臨床家の疑問解決につながるような知見を報告、病態を踏まえたIBD治療戦略について活発な議論が行われた。
診断や治療の有効性が予測できるマーカーに期待
冒頭、司会を務める仲瀬裕志氏は「この患者に何が起こっているかを理解していないと治療は奏効しない。IBDの病態まで踏み込んだ議論をしていきたい」と本セッションの目的を示した。
まず、UCに関する7演題が発表された。三好潤氏と西田裕氏はインターロイキン(IL)-12/23阻害薬ウステキヌマブの効果予測因子、再燃予測因子に関する成績を、伊藤誠人氏は粘膜への好酸球浸潤が生物学的製剤の治療経過に及ぼす影響についての検討結果を報告した。
若手奨励賞を受賞した朝枝興平氏は、UCでは血管内皮におけるMucosal addressing cell adhesion molecule(MAdCAM)-1の発現は大腸粘膜の炎症との高い相関を認め、MAdCAM-1高値がその後の再燃と関連すると述べ、フロアの注目を集めた。
角田洋一氏は、血管内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)に対する自己抗体がUC患者の層別化に有用なバイオマーカーとなる可能性を示唆。山本修司氏は、抗αvβ6インテグリン抗体が予後予測因子になりうると報告し、日本発のバイオマーカーに期待が寄せられた。
池上脩二氏は、フルクトオリゴ糖の一種である1-ケストースのUCに対する有効性・安全性を検証した単施設二重盲検ランダム化比較試験の結果を発表。1-ケストース経口摂取により臨床的・内視鏡的にUCの疾患活動性を低下させたことから、新たな治療薬としての可能性を示した。
一方、松嶋成志氏は1-ケストース高含有食品のCDへの影響について検討。UCとは異なり疾患活動性に変化はなかったものの、症状や炎症指標を悪化させなかったと報告した。
続く2演題もCD関連で、平賀寛人氏は生物学的製剤で治療中のCD患者における予後不良因子、治療リスク因子を踏まえた治療戦略を提示。菊田修氏はロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)値と小腸造影所見を比較した成績から、LRGはCDに特徴的な小腸造影所見の予測能に優れ、非侵襲的かつ有用なバイオマーカーであると報告した。
自然免疫細胞の役割を解明し、自然免疫系の制御に焦点を当てたIBD治療戦略の重要性を提示した荻野崇之氏に対しては、会場内から多くの質問が寄せられ、活発な議論が交わされた。CD合併短腸症候群に対するテデュグルチドの有効性を示した佐藤寿行氏の発表では、症例数の多さと患者QOL向上への期待が集まった。
本セッションは予定されていた時間を15分以上超過するほど議論が白熱した。最後に、司会の松岡克善氏は「多くの演題が寄せられた中、病態と臨床をつなぐテーマの演題を選択した。個々の患者に適正な治療を行うためには病態を踏まえた治療戦略が必要であり、今後も研究・発表の進展を願っている」と述べ、締めくくった。
第65回 日本消化器病学会大会 | 会長 名越 澄子 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 |
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第106回 日本消化器内視鏡学会総会 | 会長 塩谷 昭子 川崎医科大学 消化器内科 |
第27回 日本肝臓学会大会 | 会長 島田 光生 徳島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第21回 日本消化器外科学会大会 | 会長 大段 秀樹 広島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第61回 日本消化器がん検診学会大会 | 会長 日山 亨 広島大学保健管理センター |