膵がん早期発見の最前線(Early detection of pancreatic cancer)
2022年10月29日 06:30
390名の医師が参考になったと回答
International Session (Panel Discussion)1 提案:日本消化器病学会
10月29日 14:30〜17:00 第8会場(福岡国際会議場 411+412)
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膵がんは代表的な予後不良の消化器がんである。これまで治療は手術療法のみだったが、近年は術前・術後化学療法を併用する集学的治療が可能となり、膵がん患者の予後は改善傾向にある。しかし、現状においても診断時に局所進行または転移を来している患者が半数を超えており、さらなる予後改善にはより早期の診断が重要となる(図)。本セッションでは膵がん早期発見のための指標について、国内外の8人の演者が報告する。
定期検診受診中の膵嚢胞例を早期発見へ
司会の中村雅史氏は「膵がんの早期発見には非専門医との連携も不可欠」と指摘する。例えば、膵がんにより糖尿病が急速に悪化することは糖尿病専門医のよく知るところである。また原因不明の上腹部痛を有する膵がん患者は、診断に要する3~6カ月間で切除可能から遠隔転移へと急速に進行する。消化器専門医は、膵がんリスクとしての原因不明の上腹部痛と他の消化器症状がオーバーラップすることを念頭に置き、鑑別診断することが望まれる。
冒頭の指定演題ではDiscussantを務めるJun Yu氏が、膵管腺がん(PDAC)に対する術前化学療法が奏効しやすい患者の予測指標であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-7について解説する。超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を用いて採取した微量な腫瘍細胞に対し、MMP-7発現による術前化学療法の効果判定が有用と考えられている。
膵がん早期発見の腫瘍マーカーとして、より低侵襲的に採取できる便検体を用いたプロテオーム解析結果を報告するのは元尾伊織氏。便においても膵がん組織由来の蛋白質が検出されると仮定し、パイロット試験の実施を予定しているという。片岡史弥氏は、膵がんの腫瘍マーカーとして頻用されている糖鎖抗原CA19-9について発表する。定期健診受診者の中には膵囊胞や膵管異常を有する膵がん未発症例が少なくないが、血中CA19-9値をフォローすることで膵がんの早期発見につながる可能性があるという。
同様に膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)も、PDACを早期発見する上で注目されている指標だ。IPMNそのものがPDACに発展するケースもあるが、IPMNとPDACの合併例も多数存在する。大山博生氏は、IPMNサーベイランスに基づく予後について検討し、IPMNをフォローしていない症例に比べてフォローしている症例ではPDACの予後が良好であることを報告する。
膵管狭窄から早期診断を探る
膵がんはCTによる検出が困難な場合があり、範囲が不明なケースが少なくない。また造影CTを用いても膵がんの判定は困難である。川路祐輝氏は、膵実質と膵管および膵囊胞成分などの体積比が将来の膵がん発症を予測に有用だったとの検討結果を紹介する。また、膵がん発症前には限局性膵実質萎縮(FPPA)が見られることが報告されている。FPPAは早期膵がんの指標として知られており、酒井利隆氏は膵がんと病理学的診断される2カ月以上前にCT検査を施行された患者を後ろ向きに検討した内容を報告する。
膵がんに特徴的な膵管狭窄は良性の腫瘍や膵炎でも散見され、対応に苦慮することがある。佐上亮太氏は、膵管狭窄例を超音波内視鏡で観察し低エコー領域を含む膵がんの特徴的な所見を報告する。膵管狭窄例における膵がんの診断補助については、石井達也氏が連続膵液細胞診(SPACE)による診断能の成績を発表する。SPACEは特異度が高いものの感度は十分とはいえず、今後の課題についても言及される予定だ。
中村氏は「本セッションは膵がんの早期発見に加えて予後改善に向けた指標などを議論するまたとない機会であり、会場に足を運んでいただきたい。ウェブで参加される先生はぜひ視聴してほしい」と呼びかけている。
図. 早期診断・切除による膵がん予後への影響
(井手野昇氏、中村雅史氏提供)
第65回 日本消化器病学会大会 | 会長 名越 澄子 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 |
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第106回 日本消化器内視鏡学会総会 | 会長 塩谷 昭子 川崎医科大学 消化器内科 |
第27回 日本肝臓学会大会 | 会長 島田 光生 徳島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第21回 日本消化器外科学会大会 | 会長 大段 秀樹 広島大学大学院 消化器・移植外科学 |
第61回 日本消化器がん検診学会大会 | 会長 日山 亨 広島大学保健管理センター |