横断的な消化器疾患の知見で学びを深めて
第65回日本消化器病学会大会 会長
埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科 教授
名越 澄子氏
2023年10月02日 09:30
67名の医師が参考になったと回答
消化器病学では幅広い消化器疾患を扱いますが、最近の進展や現状を踏まえると3つのポイントが挙げられます。1つ目は「消化器がん治療の進歩」です。がん遺伝子パネル検査が保険適用となり、遺伝子変異に基づく個別化診療が可能になったことで、ゲノム医療の重要度が増しました。また、多くの消化器がんに対して免疫チェックポイント阻害薬や重粒子線治療が保険診療で行えるようになり、さまざまな消化器がんにおいて集学的治療が実施されています。
2つ目は「人工知能(AI)による診断」です。消化管内視鏡検査だけでなく、超音波内視鏡(EUS)による病変の診断や肝線維化の評価にもAIが活用されるようになりました。そして3つ目は「新たな診断技術の登場と治療技術の進歩」です。炎症性腸疾患(IBD)に対する新規治療薬が次々と登場し、EUSを用いたドレナージや胆道内を観察しながらの生検が可能となりました。また海外では膵がんの焼灼療法が行われるなど、目覚ましい進歩を遂げています。
JDDW 2023では外科手術や内視鏡などの治療・診断技術を含め、消化器疾患全般について横断的に学ぶことができます。こうした疾患の予後改善を目指した診療戦略につながる知見を共有できる場として、大きな意義があると考えています。
今回の日本消化器病学会大会では横断的な観点からセッションを企画しつつ、好酸球性消化管疾患(招待講演:Ikuo Hirano先生)、IBD(招待講演:Stefan Schreiber先生)、NAFLD/MASLD(特別講演:磯博康先生)、薬物性肝障害などの専門分野を掘り下げるセッションも用意しています。International Session「B型肝炎の新たな治療戦略」では、Grace LH Wong先生の招待講演に引き続き、東アジアからお招きした3名の先生の基調講演を予定しています。理化学研究所革新知能統合研究センターの上田修功先生には、特別講演として人間の持つバイアスからAIの公平性に問題が生じる危険性についてお話しいただきます。
統合プログラムでは、臨床研究の実施に伴う手続きに膨大な労力を要するようになり、臨床研究の衰退が危惧されている現状を受け、「臨床研究の支援体制と実施体制の強化」を企画しました。その他にも、自己免疫性肝胆膵疾患の診療戦略、肝胆膵希少疾患の診療体系の構築、腸内微生物叢から見た消化器疾患の病態解明など、1つのテーマの下で広範な消化器疾患を扱うセッションを取りそろえました。
JDDWは多彩な領域の参加者が集いますので、会場で参加される先生方にはさまざまな視座から活発な議論をしていただくことを期待しております。会場でのご参加が難しい場合には、オンラインで現地の雰囲気を味わっていただきながら、積極的な質問投稿をお願いいたします。