New normal時代の肝臓学、多様性を生かしてさらなる進歩を
第27回日本肝臓学会大会 会長
徳島大学大学院消化器・移植外科学 教授
島田 光生氏
2023年10月02日 09:30
66名の医師が参考になったと回答
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、私たちは新たな日常生活の様式、いわゆる「New normal」の時代に突入しました。肝臓学の領域に関しても、近年はさまざまな肝疾患に対する新規治療薬が次々と登場しており、外科的治療が中心だった時代と比べると隔世の感があります。そこで、今回のテーマは「New normal時代の肝臓学」としました。「"New normal"肝臓学にこそacademic surgeonが必須である」と題した会長講演では、こうした時代の変化を踏まえて、学識豊かな肝臓領域の外科としてあるべき姿について述べたいと思います。
国際的なセッションとしては、米国肝臓学会(AASLD)とのジョイントシンポジウムでB型肝炎ウイルスの克服を企図した予防と治療を取り上げます。また、International Session「肝癌に対する肝移植(Liver transplantation for liver cancer)」では、現状の課題解決につながる議論が期待されます。日本の肝移植技術は世界的に見ても高水準ですが、ドナー不足の影響を受け移植例は少数にとどまっています。本シンポジウムを通じて、日本の肝移植が抱える問題に目を向けていただければと思います。
特別企画のディベートも大変興味深いセッションになると期待しています。バルセロナ臨床肝がん(BCLC)病期分類AやC、慢性肝不全の急性増悪時における適切な治療は何かという議題をめぐり、演者がそれぞれの立場から見解を表明し議論を深めます。
特別講演「肝臓外科へのスマート治療室への展開」もぜひ注目していただきたいセッションの1つです。人工知能(AI)を治療選択に活用し、医療者が術中画像や患者、術者の状況をリアルタイムに共有するといった、未来の手術室をイメージできる機会になるでしょう。
加えて、「New normal時代の肝臓学」の発展には多様性を認め、活用することが不可欠であることから「Diversity & Inclusion」がサブテーマとなります。特別講演「外科医からみた医師の働き方改革」では、熊本大学大学院消化器外科学教授の馬場秀夫先生に、Diversityの視点も踏まえた働き方改革について、多忙を極める外科医の立場から課題や改善策などを解説いただきます。
同じく特別講演の「体に備わる修復性多能性Muse細胞が切り開く新たな医療」では、東北大学大学院細胞組織学分野教授の出澤真理先生から、多能性幹細胞の有用性などについて貴重なお話をしていただきます。こうした女性研究者が演者や司会を務めるセッションが多いのも、今学会の特徴です。
この他にも多数の有意義なセッションをそろえて、皆さまのご参加をお待ちしています。特に、若手の先生方に参加していただき、これからの肝臓学を背負っていくという志の下、仲間たちと夢や希望を語り合っていただければ幸いです。