好奇心と探求心が新たな消化器医療を切り開く
第21回日本消化器外科学会大会 会長
広島大学大学院消化器・移植外科学 教授
大段 秀樹氏
2023年10月02日 09:30
68名の医師が参考になったと回答
JDDWは基礎、臨床、内科から外科まで消化器学に関わる全ての領域が集う、日本でも数少ない合同学会です。単独の診療科では解決が困難な課題も、領域の垣根を越えて知識を集結すれば克服できる、そして新たな研究分野の開拓にもつなげたいという思いから、日本消化器外科学会は「好奇心と探求心を満たす融合学会」をキーワードに企画を致しました。
日本消化器外科学会が主導した統合プログラム「バイオインフォマティクスに基づく消化器疾患診療の展望」は、生命科学と情報科学が融合した新しい学術領域に関するセッションです。がん遺伝子パネル検査が保険適用となりましたが、遺伝子情報のさらなる臨床応用を目指し、専門の先生方にディスカッションしていただきます。最先端のがんゲノム医療については、理化学研究所生命医科学研究センター・がんゲノム研究チームチームリーダーの中川英刀先生に特別講演「消化器がんの全ゲノムシークエンス解析(WGS)と臨床への展開」でお話をいただきます。一見、外科から離れた分野のようですが、遺伝子情報をもたらす手術検体に最初にアクセスする立場として、得られた情報を患者さんの治療に還元したいと考える外科医は多いと思います。様々な領域の専門家が一堂に会するJDDWならではの企画といえます。
Strategic International Sessionの「胆管癌あるいは転移性肝癌に対する肝移植の現状と展望」では、日本では症例数が少ない切除不能の胆管がんと肝がんに対する肝移植について、現状や今後の展望が解説されます。現在、国内で医師主導治験が準備されているタイムリーな話題です。移植に関しては招待講演で米・スタンフォード大学のCarlos O. Esquivel先生を迎え、日本では認められていない心肝同時移植を紹介していただきます。消化器と循環器の医師が共同で行う新たな治療法ですが、再生学や免疫学などがご専門の先生方にも興味を持っていただけると考えています。移植医療は常に試行錯誤の積み重ねです。特に生体肝移植は日本で始まり、好奇心を持って難題に立ち向かう姿勢と、未知の障害に対する一貫した謙虚な姿勢が治療成績の向上に貢献し、現在の移植医療が形づくられました。会長講演の「謙虚な好奇心 ~生体肝移植から学んだこと~」でも、このようなお話をさせていただく予定です。
昨年(2022年)に引き続き今年もハイブリッド形式での開催となり、参加方法を問わず、好奇心と探求心を満たしていただける分野横断的なテーマを取りそろえました。一方で、現地で活発な意見を交わすことが学術集会の醍醐味でもあり、最先端のトピックをともに掘り下げていくことで、新たな治療につながると信じています。ぜひ会場にご参集いただければ幸いです。