変革の時代における消化器がん検診、ぜひ体感を
第61回日本消化器がん検診学会大会 会長
広島大学保健管理センター 教授
日山 亨氏
2023年10月02日 09:30
74名の医師が参考になったと回答
目覚ましい進歩を遂げる人工知能(AI)技術は、診断補助にも利用されてきています。現時点で普及は限定的ですが、近い将来、多くの医師がその恩恵を受けることになるでしょう。また、音声翻訳アプリの充実により言語の壁が低くなり、グローバル化は確実に加速していきます。そして、「治療」から「予防」へのシフトは周知の通りで、消化器がん検診が担う役割はますます大きくなることは確実です。こうした変革の時代に即して、われわれも変化しなければならないという思いを込め、「新時代へ! 消化器がん検診」をテーマに掲げました。
注目セッションは何といっても招待講演です。ベトナムの消化器領域をリードするホーチミン医科薬科大学のQuach Trong Duc先生を迎え、日本と同様にHelicobacter pyloriの感染率が高く、胃がん患者が多いベトナムの状況についてご解説いただきます。日本の医療においても参考になるところがあろうかと思います。
特別講演は、2人の先生方にお願いしています。東邦大学医療センター大森病院消化器内科教授の松田尚久先生には「新時代の大腸がん検診―内視鏡導入への期待」と題し、罹患率の低下が見られない大腸がんへのアプローチとして期待される内視鏡検診の導入についてお話しいただきます。一方、肝臓がんが依然多く、そして、膵がんが増加していることから消化器がん検診における腹部超音波検診の位置付けが高まってきています。日本大学消化器肝臓内科超音波室長の松本直樹先生には「腹部超音波検診のデジタルトランスフォーメーション」というタイトルでご講演いただきます。
統合プログラムでは、「性差」「臨床研究」「バイオインフォマティクス」「診断モダリティー」にフォーカスした4セッションに参加します。中でも、新規の診断モダリティー登場への期待を込めて、「消化器領域における新たな診断モダリティー」に注目しています。
胃がん検診と大腸がん検診は、消化器がん検診の重要な柱です。パネルディスカッション「対策型胃内視鏡検診の課題と展望」では、2016年度に開始された対策型胃内視鏡検診の振り返りと今後の展望について、ワークショップ「より効果的な大腸がん検診の実現に向けて」では、便潜血検査の新たな位置付けや内視鏡検診の導入についての議論がなされるでしょう。
会場およびオンラインで多くの先生方にご参加いただくことで、消化器がん検診のさらなる進展に向けた、活発なディスカッションが展開されると期待します。特に、会場にお越しいただく先生方は、この機会を交流や情報交換の場として大いにご活用ください。得られた情報や知見は周囲と共有し、臨床にフィードバックしていただければ幸いです。