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ADA 2019

循環器専門医に聞くADA 2019

 6月7〜11日、米・サンフランシスコにて米国糖尿病学会(ADA 2019)が開催された。毎回注目を集める学会であるが、今年(2019年)は糖尿病治療薬の心血管安全性を検証する臨床試験の報告が相次ぎ、発表会場は連日大きな盛り上がりを見せた。これらの試験結果は臨床にどのような意味を持つのだろうか。佐賀大学内科学講座主任教授の野出孝一氏に循環器専門医の立場から話を聞いた。

カナグリフロジンに心血管疾患初発予防効果

 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬カナグリフロジンによる腎と心血管の両アウトカムの改善を示したCREDENCE試験※ 。同試験の結果は腎アウトカムを主要評価項目としたSGLT2阻害薬の大規模臨床試験で世界初の報告となったことから、大いに注目を集めた(関連記事:カナグリフロジンで腎アウトカムが改善)。そのサブグループ解析の結果を、研究グループの1人で米・Stanford Center for Clinical ResearchのKenneth W. Mahaffey氏が第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7〜11日、サンフランシスコ)で発表。心血管疾患(CVD)の既往の有無にかかわらず、カナグリフロジンによる心血管イベントリスクの低下および腎アウトカムの改善が一貫して認められたと報告した。

乳がんは糖尿病発症の危険因子か

  糖尿病患者では、乳がんの発症リスクが高いことが複数の研究で示されている。しかし、乳がん診断後の糖尿病リスクについては明らかでなかった。こうした中、デンマークの住民ベースの症例対照研究において、乳がんと診断された患者では、その後約5年間に糖尿病と診断されるリスクが23%高いことが示された。デンマーク・Aarhus University HospitalのReimar W. Thomesen氏らが、第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7~11日、サンフランシスコ)で報告した。

糖尿病網膜症は透析導入と死亡の危険因子

  尿中アルブミン排泄量(UAE)の増加および糸球体濾過量(GFR)の低下は、2型糖尿病患者における腎機能低下の危険因子であることが明らかとなっている。北里大学健康管理センター長で同大学教授の守屋達美氏は、UAEおよびGFR、糖尿病網膜症と血液透析導入および死亡との関係について検討。糖尿病網膜症はUAEやGFRと並び血液透析導入および死亡の危険因子となることを明らかにし、第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7~11日、サンフランシスコ)で発表した。

リナグリプチンとSU薬の心血管安全性は同等

 DPP-4阻害薬に関しては、これまでリナグリプチンのCARMELINA※1を含めて4つの心血管アウトカム試験が実施されたが、いずれもプラセボとの非劣性が証明されるにとどまっていた。こうした中行われたCAROLINA※2は、DPP-4阻害薬では実薬同士を比較した唯一の心血管アウトカム試験で、長年議論されてきたSU薬の心血管安全性を検証するという点でも注目を集めていた。ドイツ・RWTH Aachen UniversityのNikolaus Marx氏らは第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7~11日、サンフランシスコ)でCAROLINAの結果を発表。リナグリプチンとSU薬グリメピリドの心血管安全性は同等だったと報告した。

経口セマグルチドの心血管死・全死亡が半減

 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、経口GLP-1受容体作動薬セマグルチド投与により心血管死および全死亡が約50%減少することが示され、同薬の心血管安全性が確認された。カナダ・Toronto General HospitalのMansoor Husain氏らが第Ⅲa相プラセボ対照ランダム化比較試験PIONEER 6の結果を第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7~11日、サンフランシスコ)で発表。詳細はN Engl J Med(2019年6月11日オンライン版)に同時掲載された。

デュラグルチドで心血管イベントが抑制

  心血管疾患の既往歴がない患者が約7割を占める2型糖尿病患者群において、GLP-1受容体作動薬デュラグルチド群ではプラセボ群に比べて主要心血管イベント(MACE:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)が有意に減少することが示された。カナダ・McMaster UniversityのHertzel C. Gerstein氏らが、デュラグルチドの効果をプラセボと比較した国際多施設ランダム化比較試験Researching Cardiovascular Events with a Weekly Incretin in Diabetes(REWIND)の結果を第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7~11日、サンフランシスコ)で発表。詳細はLancet(2019年6月10日オンライン版)に同時掲載された。

一部の糖尿病治療薬で認知症リスク低下

 糖尿病は血管性認知症の危険因子であることが知られているが、近年、糖尿病患者ではアルツハイマー型認知症の発症リスクも高いことが明らかとなっている。糖尿病治療薬と認知症の関係を検討したデンマークの2型糖尿病患者の大規模コホート研究から、一部の糖尿病治療薬が認知症の発症リスク低減に関与する可能性が示された。デンマーク・Bispebjerg-Frederiksberg Hospital/Aarhus University HospitalのJørgen Rungby氏らが、第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7~11日、サンフランシスコ)で発表した。

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