急性心筋梗塞の死亡率、高齢女性などでは低下
急性心筋梗塞(AMI)の死亡率は、緊急経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の普及や薬物療法の進歩、循環補助装置の改善などにより過去40年間で劇的に改善したが、最近10年間に限ると、死亡率の改善が停滞しているといわれている。日本医科大学循環器内科の宮地秀樹氏らは、東京都CCU連絡協議会(通称:東京CCUネットワーク)に登録された院内死亡率データを解析した結果、「全体としての死亡率は既に低率ではあるが、高齢女性や重症患者の死亡率は有意な低下が続いており、これらはPCI施行率の増加と関連が見られる」と第83回日本循環器学会(3月29〜31日)で報告した。
循環器専門医数がAMIの生存率に影響
心原性ショックを伴う急性心筋梗塞(AMI)患者の予後予測因子は検討されてきたが、治療施設の因子が予後に及ぼす影響は明らかでなかった。九州大学循環器内科講師の的場哲哉氏らは、循環器疾患診療実態調査(Japanese Registry Of All cardiac and vascular Diseases; JROAD)および関連診断群分類(DPC)データの解析結果を、第83回日本循環器学会(JCS2019、3月29~31日)で報告。緊急心血管治療施設では、日本循環器学会認定循環器専門医を一定数以上配置することが、心原性ショックを伴うKillip分類Ⅳ群のAMI患者における30日以内生存率を改善させる可能性が示された(関連記事「心原性ショックの30日死亡率は34%」)。
冠動脈疾患血行再建GLが改訂
日本循環器学会の「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(GL)2018年改訂版」が、外科系を含む循環器関連7学会の合同研究班により策定され、3月29日に同学会の公式サイトで公開された。第83回日本循環器学会(JCS2019、3月29〜31日)では、合同研究班班長で東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の中村正人氏と外科系班員で東京医科歯科大学心臓血管外科教授の荒井裕国氏が、改訂のポイントを報告した。中村氏は「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)を併記した初めてのGL」と位置付け、推奨レベルがクラスⅡb、Ⅲとなる病変分類の症例に対してはハートチームによるアプローチを強く推奨したと述べた。
アブレーション、全例調査で日本の実態解明
近年、日本では不整脈に対するカテーテルアブレーションの施行例が急激に増加しており、循環器疾患診療実態調査によると2017年度には7万例を超えた。しかし、その実態はこれまでほぼ不明であった。東京慈恵会医科大学循環器内科教授の山根禎一氏は、カテーテルアブレーション症例全例登録プロジェクト(J-ABレジストリ)の中間解析結果を第83回日本循環器学会(JCS2019、3月29~31日)で発表。同治療の対象となる不整脈の種類や具体的な手法、合併症などの現状が明らかになりつつあることが示された。
急性大動脈解離、初の「診療の質指標」を開発
院内死亡率が25~30%と非常に高いことで知られる急性大動脈解離(acute aortic dissection; AAD)の日本における治療状況を明らかにするため、武蔵野赤十字病院(東京都)循環器内科の山口徹雄氏らが大規模データベースを解析し、そのデータを基に診療の質指標(Quality Indicator; QI)を作成、詳細を第83回日本循環器学会(3月29〜31日)で報告した。同氏は「本邦においてAADのガイドラインに沿った治療が十分に行われているかどうかの基礎データが乏しかった。今回作成したQIの達成率はアウトカムと有意な関連が確認され、今後の診療の質均てん化や診療ギャップの改善に有用と考えられる」と述べた。
尿酸降下薬は動脈硬化を抑制するか?
無症候性高尿酸血症に対するキサンチンオキシダーゼ阻害薬フェブキソスタットの効果を、生活指導のみによる非薬物療法と比較した多施設共同前向きランダム化オープンラベル・エンドポイント盲検化試験PRIZE study(研究代表:佐賀大学循環器内科教授・野出孝一氏)で、動脈硬化の進展抑制に関して両者に差はないことが示された。同科特任講師の田中敦史氏が、同試験の結果を第83回日本循環器学会(3月29~31日)で発表した。
1,5-AG低値で冠動脈石灰化が重症か
食後高血糖の臨床指標として用いられている血中1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG)値が低い冠動脈疾患患者は、冠動脈石灰化のレベルが強いことが分かった。順天堂大学静岡病院循環器内科の和田英樹氏らが、第83回日本循環器学会(JCS2019、3月29~31日)で報告した。
日本で新型たばこの"人体実験"進行中!?
日本の喫煙人口は、ここ数十年で男性を中心に大幅に減少しているが、近年は新たなたばこ問題が浮上してきた。加熱式たばこなどの新型たばこの流行だ。たばこ問題に取り組んできた大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長の田淵貴大氏は、第83回日本循環器学会(JCS2019、3月29~31日)で「新型たばこによる健康被害の程度は、紙巻きたばことほとんど変わらないのではないか」と指摘し、「(日本で)まさに人体実験が進行中ともいえる」と警鐘を鳴らした。
乳酸値が急性腎障害リスクの予測険因子に
急性腎障害(AKI)は、急性心筋梗塞患者の予後不良因子として知られている。宮崎市郡医師会病院心臓病センター循環器内科の合力悠平氏は、第83回日本循環器学会(JCS2019、3月29~31日)で、急性心筋梗塞患者におけるAKI発症と乳酸値の関連についての検討結果を報告。「乳酸値は急性心筋梗塞患者のAKIリスクを予測する有用な因子になうる」と述べた。