学会長に聞く
Society 5.0に向けた先端外科医療と内科との連携を考える
猪股 雅史 氏
第19回日本消化器外科学会大会 会長
大分大学 消化器・小児外科 教授
近年、日本では高齢化の進展に伴い、がんやさまざまな併存疾患を持つ患者の増加が予想されています。消化器領域でも病態が多岐にわたるケースが増え、診療科を横断しての治療や多職種連携による集学的介入が重視される傾向にあります。日常診療では、既に「キャンサーボード」の設置など多科・多職種での連携が進んでいますが、JDDWはこうした横断的取り組みを学会レベルで実現できる場です。5学会の連携を図りながら、活発に議論したいと考えています。
外科的治療では、体力の低下した高齢者に対応可能な低侵襲手術が求められており、世界的にも内視鏡手術やロボット支援下手術、人工知能(AI)ナビゲーションなどの先進的な医療技術が急速に広まっています。こうした「Society 5.0」において消化器外科医が果たすべき役割を考えるきっかけとして、特別講演ではAIやロボット技術に関する最前線の話題を企画しました。さらに、統合プログラムでは感染症の流行や災害の発生時に、医療および外科教育を停滞させず提供するための方策も検討します。
また、International Sessionではアジアにおける低侵襲手術および周術期のエビデンス構築を検討する多施設共同研究、Strategic International Sessionでは局所進行直腸がんの治療戦略に関する演題を盛り込みました。国内外のデータを持ち寄りディスカッションすることで、日本、アジア、そして世界規模でのベストな治療を模索する狙いがあります。
JDDW 2021は昨年に続きハイブリッド開催を予定していますが、ご自身に適した方法で参加し、ぜひ議論を楽しんでいただきたいと思います。